黄金比の謎(と[[黄金比]]についてのメモ)
このブクマでもわかるほど人々の関心を捕らえて離さない黄金比だけれど、最も美しいとされている理由については様々な諸説がある。
美の構成学、デザインに潜む美しさの法則など、デザインを話題にした書籍には必ずと言っていいほど子のトピックが出てくるが、「なぜ、美しいといえるのか」「なぜ1:1+√5/2の比率なのか」については言及されていない。
そのことについて触れられているエントリーがこちら
私は、黄金比を美しいとは感じませんが、絵や風景や音楽などを美しいと思うことはあります。何故「美しい」と感じるのか、知りたいと思っています。ずーっと考えていますが、よく分かりません。
黄金比を信奉する人が、人体(自分)と宇宙が同じかたち(相似形)で内包関係にある(入れ子構造?)と思い込むことで「美」を意識した、という解釈ならば、理解できないわけではありません。
でも、それは、黄金比でなくても「相似形」つまり単なる比、で良いことになるのです。
僕は「なんとなーく黄金比はすっきり感じる」くらいだけれど、「何故?」については同じ感覚でした。
そこで、もう少し数学的性質から黄金比について掘り下げる本を探してみました。
- 作者: 渡邉泰治
- 出版社/メーカー: 化学同人
- 発売日: 2007/03/20
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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本書は著者が数学者というより教育者の立場として、黄金比を介した数学の深みを紹介していく。
よくある美術書での黄金比の引き合いに出されるミロのビーナスや葛飾北斎の富嶽百景の例もとりあげているが、より算術的手法で黄金比の機能美について述べているのが興味深い。
たとえば、草花の葉の出方について。一つの茎の節から一つの葉をつける「互生」の葉っぱが茎を軸に螺旋状に生えていくと仮定し葉の生える回転角と比率のシュミレーションがわかりやすく書いてある。
最も効率よくそれぞれの葉っぱが日光を受けることが出来る回転角は演習を黄金比で分割された黄金角(=135.507…°)と一致する。またヒマワリの種子の配置や松かさの実のつき方に注目すると配置の回転角が黄金角と一致する
等、数学的性質が機能的に優れた効力を発していることを自然界から証明している。
ただ、著者は黄金比とは
- 「数学的性質として」
- 「自然の摂理に対して」
- 「人間の感覚に対して」
この三つにおいてちょうど良い感覚の値だとしている。
黄金比は無理数であり、円周率、ネイピア数のように求めきれないものである。
至高、絶対のプロポーションということでなく、「なんとなく、ちょうどいい」ことが黄金比たる所以であり、曖昧だからこそ人は美しいと感じ得るのではないか、と。
「最も美しい」ということばが何か黄金比を*1金科玉条のようにとらえがちにしてしまうのかも知れない。
本書の「ちょうどよい」という言葉。とても良い言葉に感じた。
[追記]互生と黄金角に関しては以下のリンクがわかりやすいです
黄金比
*1:上のリンクのブクマコメントにもあるけど、使えば良いってもんじゃないこと